マンションの床下配管の修繕費用負担について

 更新日/2019(平成31→5.1令和改元)年7月5日 

 ここで、「マンションの床下配管の修繕費用負担について」検討しておきます。

 2019(令和元).7.4日


マンションの床下配管の修繕費用負担について
 弁護士河原崎弘「階下の天井裏の排水管枝管は共用部分か、専有部分か 」参照。
 マンションでの水漏れによる階下の部屋の天井、壁、衣類等への損傷につき損害賠償責任如何。
排水管が専有部分ではない場合の図
 区分所有権の対象となるのは、専有部分です( 建物の区分所有等に関する 法律 2 条 1 項)。それ以外は共用部分です。
共用部分は、次のものです。共用部分以外は専有部分となります。
  • 構造上区分所有者の全員あるいは一部の者が共用する建物の部分です(法定共用部分)。
  • さらに、規約によって共用部分とする建物あるいは敷地部分もあります(規約共用部分)。
 漏水個所が、専有部分なら、各区分所有者に 維持管理の責任があり、共用部分なら管理組合に責任があります。従来、排水管などの配管が専有部分か、共用部分かについては、次の3説がありました。
  1. 使用者に着目する説
    共同で使用している本管(縦管)は共用部分、特定の占有者が使用している枝管は専有部分と考える。
  2. 上記1説を、配管の存在する場所によって、修正する説。これによると、本管は共用部分である。枝管のうち、専有部分内に存在しないものは共用部分、専有部分内に存在するものは専有部分と考える。
  3. 排水管は共用部分と考える説。
 従来 1 説が有力でしたが、平成12年に、新しい判決があり、これは 2 説を採用しているようです。これは最高裁の判決ですから、先例としての価値があります。弁護士は、この判決に次のようにコメントしました。「この判決は区分所有建物にとって重要な判決です。この判決が、管理組合に知られていくと、各区分所有者ではなく、管理組合が排水管を大修繕する方向に変わるでしょう」 。
 判例
 東京簡易裁判所平成19年12月10日判決

 1 本件マンションの管理規約,使用細則(甲1)第7条2項(1)によれば「天井,床及び壁は,躯体部分を除く部分を専有部分 とする。」と定められている。
 2 本件配水管は,本件マンションの902号室の天井と1002号室の床下との間の空間に存在する配水管で,床下から約5cm のところに亀裂が入っていたことが原因とする水漏れであったものと認められる(甲6)。
 3 そこで判断するに,本件マンションの管理規約,使用細則第7条2項(1)では天井までが専有部分とされるが,天井裏は専有 部分とは解されないこと,床は専有部分とされるが,床下は専有部分とは解されないところ,本件配水管の亀裂があった部分は ,90 2号室の天井裏であり,かつ,1002号室の床下の空間であると認められることから,902号室及び1002号室のいずれの専有 部分でもなかったと解される。本件マンションの管理規約,使用細則第8条によれば,「対象物件のうち共用部分の範囲は,専有部分 を除く部分とする。」と定められ,また,同第18条によれば「敷地及び共用部分等の管理については,管理組合が責任と負担におい てこれを行うものとする。」と定められていることからすると,本件配水管の亀裂した箇所は共用部分であり,その修繕義務は被告が これを負担するものと認められる(なお,天井裏の排水管についてはその共同性から共用部分とした裁判例として,東京地判平成8年 11月26日判例タイムズ954号151頁。天井裏の排水管の枝管について,これを上の階の部屋から点検,修理することが不可能 であることなどを理由に,区分所有者全員の共有部分に当たるとした判例として,最高裁判平成12年3月21日判例タイムズ臨時増 刊1065号56頁 参照)。
 最高裁平成 12 年 3 月 21 日判決(判例時報 1715 - 20 )

 本件建物の 707 号室の台所・・・・便所から出る汚水については同室の床下にあるいわゆるスラブを貫通してその階下にある 607 号室の天井裏に配された枝管通じて、共用部分である本管を(縦管)に流される構造になっているいるところ、・・・本件排水管はコンクリートスラブの下にあるため、 707 号室及び 708 号室から本件排水管の点検、修理をすることは不可能であり、 607 号室からその天井裏に入ってこれを実施するしか方法はない。右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし建物の区分所有権等に関する法律2条 4 項にいう専有部分に属しない建物の付属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分にあたると解するのが相当である。
 東京高等裁判所平成9年5月15日判決

 2 本件配水管は専有部分か共用部分か。
 建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)は、区分所有権の目的となる建物については、これを専有部分と共用部分に区分し、共用部分について、その所 有関係、使用権の所在、管理の方法及び費用の負担等について、必要な定めをしている。これは、区分所有権の目的となる建物の特殊性を考慮し、建物の維持管理、機能 の保全等の見地から、共用部分について民法の共有とは異なる法的取扱いが必要とされることによるものである。したがって、目的物が専有部分か共用部分かを判断する については、このような法の定める規律を受けるのにふさわしいかどうかを考慮する必要がある。
 本件排水管は、建物の付属物であるところ、法二条四項は、専有部分に属しない建物の付属物を共用部分と定めている。すなわち、建物の付属物のうち専有部分に属す るもの以外のものを共用部分としている。そこで、本件排水管が専有部分に属するか否かを検討することとするが、この検討に際しては、本件排水管か?設置された場所 (空間)、本件排水管の機能、本件排水管に対する点検、清掃、修理等の管理の方法、及び建物全体の排水との関連などを、総合的に考慮する必要がある。
(一) まず、本件排水管が設置された所(空間)は、前記のように六〇七号室の天井裏であるが、その上部の床スラブが建物全体を支える堅固な構造物であり、七〇七 号室と六〇七号室との上下の境をなすものであるのに丶し、天井板はそのような堅固なものでないことからみて、天井裏の空間は、六〇七号室の専有部分に属するものと 解するのが相当である。
(二) 次に、本件排水管の有する機能をみると、本件排水管は、七〇七号室の排水の全部と七〇八号室の排水の一部を排水本管に流すという機能を有するものである。 (三) 本件排水管に対する点検、清掃、修理等の管理という点からみると、本件排水管は六〇七号室の天井裏にあるため、本件排水管を利用して排水を流している七〇 七号室又は七〇八号室の所有者又は占有者が、点検、清掃、修理等を行うためには、六〇七号室に入らなければならず、そのためには、六〇七口室の所有者又は占有者の 承諾を得なければならない。
(四) さらに、本件排水管と建物全体の排水との関連について考えると、各戸の排水は、枝管を通って本管に流れ込むこととなっているので、枝管を含めてすべての管 が統一された形態や材質を有するのでないと、例えば建物全体の排水管を同じ洗剤や道具を用いて同じ方法で洗浄する際に不都合を生じるなど、管理上困難な問題が生じ る。また、安全面からいうと、本件のように重層的に各専有部分が配置されている建物の場合には、一箇所の水漏れの影響する範囲が大きくなる可能性があって、枝管の 安全性を維持することに複数の区分所有者が共通の利害を持つことがある。このように枝管についても全体的な観点から管理する必要性が大きい。

 以上のように、本件排水管は、七〇七号室の排水の全部及び七〇八号室の排水の一部を排水本管に流すという機能を有しており、その点では七〇七号室及び七〇八号室 に付属するという一面を有する。しかし、本件排水管の存在する空間は六〇七号室に属しており、場所的には七〇七号室又は七〇八号室の所有者又は占有者の支配管理下 にあるということはできず、したがって、その点検、清掃、修理等の管理をするには六〇七口室に立ち入らなければならない。さらに建物全体の排水との関連からいうと、 排水本管との一体的な管理が必要である。
このように本件排水管は、特定の区分所有者の専用に供されているのであるが、その所在する場所からみて当該区分所有者の支配管理下にはなく、また、建物全体の排 水との関連からみると、排水本管との一体的な管理が必要であるから、これを当該専有部分の区分所有者の専有に属する物として、これをその者の責任で維持管理をさせ るのは相当ではない。また、これが存在する空間の属する専有部分の所有者は、これを利用するものではないから、当該所有者の専有に属させる根拠もない。結局、排水 管の枝管であって現に特定の区分所有者の専用に供されているものでも、それがその者の専有部分内にないものは、共用部分として、建物全体の配水施設の維持管理、機 能の保全という観点から、法の定める規制に従わせることか相当であると判断される。よって、本件排水管は、専有部分に属しない建物の付属物として、共用部分であるというべきである。
 東京地方裁判所平成8年11月 26日判決(判例タイムズ954-151)

 本件排水管は、区分所有者である原告の建物(707号室)の台所、洗面所、風呂、便所から出る排水を本管に流す枝管であり、原告建物の床下にある床コンクリート(共用部分)を貫通して、階下の被告鳥羽所有建物(607号室)の天井裏に配管されているものである。そして、707号室の隣室の708号室の汚水管は戸境壁を貫通して607号室天井裏に横引きされて、707号室の汚水管と接続し、さらに707号室排水管に接続した後、本管に接続されている。 また、707号室の洗面台の排水は、湯槽下に流れ、風呂場の排水管を通って、床コンクリート下の排水管と接続しているものと推測される。
(二) 607号室の天井裏と共用部分である床コンクリートとの間の空間は、床コンクリート及び階下の天井によって完全に遮断されているので構造上の独立性があると見られるが、右空間には上の階からの排水管のみが設置されていることからみると、階下の区分所有者の利用に供せられるものとはいえないから、利用上の独立性があるとはいえないので、区分所有の対象となる専有部分と認めることはできない。したがって、右空間部分は、共用部分と認めるのが合理的である。そして、右排水管は、雑排水を機械的に流す機能を有するものであり、本件建物全体の雑排水を集め、公共下水管に流すという共同性を有するものと考えられる。また、本件排水管は、その維持管理の面から見ると、707号室の床下の床コンクリートと階下の607号室の天井裏の空間に設置されているため、原告の好みによって維持管理を行う対象となる性質のものとはいえず、本件区分所有者の共同で管理することが便宜である。
(三) 以上の点を考慮すると、本件排水管は、本件建物全体への附属物というべきであり、法二条四項から除外される専有部分に属する建物の附属物に該当しないから、共用部分と解するのが相当である。
 東京地裁平成 3 年 11 月 29 日判決

 本件雑排水管は・・・・・共用部分と見られる床下と階下の天井との間に敷設されており、維持管理の面からは、むしろ、「本件マンション全体への附属物」というべきであり、建物区分所有法 2条 4 項から除外される専有部分に属する建物の附属物とはいえず、同法2条 4 項の専有部分に属しない建物の附属物に該当すると解するのが合理的である。・・・したがって、本件雑排水管取替工事については、建物区分所有法18条 1 項の「共用部分の管理」として集会の決議で行うことができるというべきである(判例時報 1431 - 138 )。 建物の区分所有権等に関する法律
第 2 条(定義) この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第4条第2項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第5条第1項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。
登録 Sept.4, 2000
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161


漏水事故6つのポイント
 北林真一管理組合役員必見!マンションにおける漏水事故6つのポイント~雨漏り、水漏れ~ 」参照。
 ①水漏れの発生箇所はどこか
 ②水漏れの原因は何か

 ■水漏れの原因は、大別すると次の3つに分かれる。

①居住者の使用上の過失などの人為的な原因に基づく場合
②施工上やリフォームの際など、工事業者の責任に基づく場合
③人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合

 1の人為的な漏水事故の事例

  • 全自動洗濯機のホースの接続がゆるく、使用中にホースが抜けて下階に漏水してしまった場合
  • 浴室の排水口に髪の毛が詰まった状態で、浴室の水が溢水して漏水してしまった場合
  • 玄関の防水処理がされていない床を水洗いし、下階に水漏れさせた場合
  • 居室内の水道パッキングの不具合で、下階に水漏れさせた場合
  • トイレを詰まらせて、汚水が溢水し、下階に水漏れさせた場合
  • その他排水口の不具合を生じさせ、下階に水漏れさせた場合
  • 窓を開けっぱなしで出かけ、大雨が降り込み、下階に水漏れさせた場合 

 各部からの漏水原因と防止策

・窓からの漏水
 外出時の窓の閉め忘れなどの些細なことで、大量の雨水が室内に入ります。クレセント(窓のカギ)まで、きっちりかけましよう。開閉が固い場合に無理な操作をすると建具金物が故障し、隙間から雨水がにじむこともあります。(※通常、浴槽を除き一般居室の床は、防水されていません。)

・バルコニーからの雨水浸入
 バルコニーにはドレンや排水溝があります。こまめに確認し、枯葉、土砂などを除去しましょう。土砂などを流すと、ドレンや樋を詰まらせ、雨水が室内に入ってくる恐れがあります。床が防水されていない場合は、水を流さないようにしましょう。

・上階バルコニーからの漏水
 ドレンや排水溝に枯葉やゴミ、土砂がたまると、排水しにくくなり、下階への雨漏りの原因にもなります。各住戸のバルコニーはこまめに点検、掃除をしましょう。

・設備機器、配管類から漏れてくる水
 マンションには、給湯設備などの給排水衛生設備が、いろいろ使われています。設備機器、配管類関連の漏水には、まず配管の劣化などで開いた穴やジョイント部分から、中の液体が漏れるという事故があります。それ以外にも排水管が詰まることによって、排水が別のルートから出てしまったことによる事故もあります。排水管に流してはならないものなど、注意すべきことを以下にまとめました。

☆トイレ関連の場合
 便器が詰まった場合はラバーカップ(スパッド)を用いて清掃しましょう。次のようなものを便器に流すと、詰まりの原因となります。
・箱入りのティッシュペーパー
・生理用品
・鉛筆、歯ブラシなど

☆その他の排水関連の場合
 次のようなものは、排水管に流さないようにしましょう。
・調理用の油や油脂類(特に高温の湯)
・ディスポーザーの残りくず
・可燃性、引火性の石油類、有機溶剤
・糸やひも状の繊維
・酸、アルカリなどの薬品類

 2の施工上やリフォームの際の工事業者の責任に基づく場合

 水漏れの原因がマンション建設請負工事の不手際による場合があります。

 ≪マンション建設請負工事の不手際による場合の事例≫

  • 床下の給水管に釘が刺さっていたことが原因で下階に水漏れさせた場合
  • 給排水管等の接続不良で下階に水漏れさせた場合
  • その他、水回り関係のリフォーム工事を行った後に水漏れさせた場合
 3の人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合

 ≪人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合の事例≫

  • マンションの排水管等の設備が老朽化して水漏れが生じた場合
  • 給湯管にピンホールが発生し、下階に水漏れさせた場合

 やっかいな事例

 建物の劣化に伴うトラブルで、専有部分を巻き込み、大事になる代表的なものが「雨漏り」です。その原因は千差万別で浸入箇所もさまざまです

 屋上部分

 屋上の防水には、寿命がありますが、寿命に達していなくても、ドレンの清掃や防水層の定期点検を怠ると、漏水などを起こすことがあります。
・日射によって押さえコンクリートが熱伸縮し、立ち上がり部分の防水層を圧迫し膨れや破損が生じ、雨漏りを引き起こす
・階段や設備の基壇まわりの防水層に亀裂が生じ、境目部分から雨漏りが発生
・フラットドレインが落ち葉で目詰まりし、ドレンまわりから漏水

 壁面・窓まわり

・掃き出し窓のサッシ下枠と防水層の間がモルタルのみで防水層との納まりが悪く、防水層の裏側に雨水が浸入
・床面の防水層を壁まで立ち上げ、モルタルや巾木で押さえ、その上端部のひび割れでシーリングが切れ、雨水が下階の住戸に浸入
・風雨の巻き込みで、外壁面に設置されたレンジフードから雨水が浸入

 意外と気付かない防水端部の不具合

特に最上階(上階が屋上の階)に住まわれている方だけに関係のある漏水です。屋上の床仕上げ面や防水層の劣化、ドレンの詰まり、パラペットまわりのシーリングの劣化など、考えられる原因はさまざまです。
・屋上パラペット笠木まわりや外壁の故障部からの雨水の浸入
・小庇上端や出窓まわりに亀甲状のひび割れが生じ、付け送りモルタルと躯体との取り合い部に雨水が浸入
・外壁のひび割れから、室内に漏水
・外壁のタイルの下地のコンクリートに入ったひび割れからの漏水
・雨掛かり・雨落とし部の雨水が伝わり軒天鼻先まわりの鉄筋露出故障

 ●ちょっと一言|シーリング材について
 外部建具回り、コンクリートの打継部や、ひび割れ誘発目地などには、雨水の浸入を防止するためにシーリング材や機密ゴムが使用されています。このシーリング材は恒久的な材料ではなく、紫外線の影響や湿度変化による変形の繰り返しにより、経年とともに徐々に劣化して、肌割れや破断が生じ、室内にも漏水する場合があります。

 ③損害賠償責任を負うのは誰か

 水漏れ事故が誰かの過失を原因としたものなら当然にその人が責任を負担します。他方、マンションの排水管の老朽化などが原因の場合には、その原因となった欠陥部分の所有者が責任を負うことになります。共用部分に原因があった場合には、区分所有者全員で共同して責任を負うことになります。

 ≪損害賠償責任を負う事例≫

  • 建築工事の瑕疵による場合は、分譲業者や工事を行った者が負います。
  • 設備の老朽化等で、発生箇所が専有部分であれば住戸の所有者が、共用部分であれば管理組合が負うことになります。
  • 洗濯機からの漏水等の人為的な場合は、溢れさせた居住者が負うことになります。居住者が賃借人であれば、賃借人が負い、通常住戸の所有者は負いません。

 しかし、欠陥箇所である漏水部分がどこにあるのか、はっきりしていると問題ありませんが、はっきりしないケースもあります。区分所有法では、建物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その瑕疵は共用部分にあるものと推定しています。要するに、区分所有者全員が共同して賠償責任を負うことになります。この規定は、欠陥部分がどこにあるのか不明の場合を前提としていますが、欠陥部分が明らかだけれど、それが共用部分なのか専有部分なのか不明である場合にも適用があると解されています。

 ④原因追及の方法

 水漏れの原因追及には、日時を特定し、以下の事項を確認します。

  • 水漏れ事故が発生した時は、雨の日か、雪の日か、風の強い日だったか
  • 上階の人が不在時だったか、給排水時だったか
  • 給湯器、暖房の使用時だったか
  • 入浴時だったか
  • 上階の人に不注意はなかったか

 さらに、漏水の性質を確認します。

  • きれいな水であれば、上水
  • 汚い水であれば、汚水か雑排水
  • 温水であれば、給湯、浴槽湯
  • 水回りに関係ない箇所であれば、雨漏り
 ⑤水漏れ箇所がわからない場合

 水漏れの箇所がわからない場合は、専門業者に調査を依頼します。

 管理会社に管理を委託している場合は、水漏れ情報を把握し、専門業者と日程緒性のうえ、原因が共用部分にある場合は、当事者へ原因と修理予定等について説明します。専有部分であれば、当事者間の解決となります。

 調査方法として、通常は、漏水であれば、直上階の居住者に漏水の事実を確認し、漏水箇所の確認等の協力を求めることになります。この場合、管理組合や被害居住者から協力を求められた階上の居住者は、原則としてこれに協力する義務があります。

 ⑥損害賠償保険の申請

 水漏れ事故として、思わぬ高額の賠償を負わされることがあります。

 管理組合、所有者、賃借人のいずれも、事故に備えて損害賠償保険に加入しておくことが必要です。特に水漏れ事故の場合、共用部分か専有部分かが判然としないケースも多いので、管理組合が加入する「マンション総合保険」に特約を付加することにより、個人賠償責任を担保ることができます。また、水漏れ調査費用まで支払われる保険もありますので、保険の賠償の対象、範囲等を確認しておくことが大事です。管理組合で水漏れ事故に備えた損害保険に加入している場合は、管理会社、保険会社に連絡をするなどして、保険申請の手続きを行います。

 まとめ

 住戸内の蛇口を全て締めた状態でも、水道メーターが動いているときは、漏水の恐れがあります。早急に管理会社へご相談ください。また、長期間留守にされる場合は、水道メーター横のバルブを閉めることをお勧めします。屋上の防水・外壁の仕上げ材などは直接日光・風雨・大気汚染などの厳しい自然環境にさらされており、経年とともに劣化が進行します。屋上と外壁は早めの定期点検、補修をお勧めします。劣化診断、リフォームについては、管理会社にご相談くださいね。

北林真一

 北林真一

 あなぶきハウジングサービス 北林 真一(きたばやし しんいち)
 大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。