位置指定道路について

 更新日/2019(令和元).9.20日

位置指定道路について
 位置指定道路とは、建築基準法42条1項5号に該当する道路のことを云う。次のように規定されている。
  建築基準法42条1項5号
 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの。
 
 建築基準法上の道路に2m以上接していない土地には建物を建てることができない。これを接道義務と云う。ある一団の土地を購入し、いくつかの区画して分譲する場合、大規模団地の場合には開発許可を必要とする。比較的小規模の区画で、開発許可制度の適用を受けないものの場合には位置指定道路で対応する。開発許可制度の適用を受けるかどうかの基準は、その土地が属する都市計画の区域や敷地面積等によって違いがある。詳しくは土地家屋調査士の職掌になる。
 位置指定道路は次のように作る。特定行政庁に「通行往来に関して公(おおやけ)の利用に提供することを認める」旨を誓約した申請書及び建築基準法42条1項5号基準に合わせた私道図面等々の一式書類を提出する。書類審査が完了すれば道路工事に着手し、工事が完了したら担当部署の職員立ち合いのもと現場の検査を受ける。現場検査に合格すると、約10日後には指定・公告される。公告には指定番号や指定道路の種類、年月日、延長および幅員が表示され、その後、申請者には道路位置指定(指定変更・指定取消)通知書が交付され、晴れて位置指定道路になる。
 このようにしてできた道路を位置指定道路と呼ぶ。 いわば準公道的な資格になっており、その道路に対して2m以上接道する間口を持つ区画を作ることで宅地分譲が可能となる。位置指定道路は道路法や都市計画法に基づいていない道路であり、民間で整備された道路である。

【道路の所有者側からの通行制限の可否】
 位置指定道路は、準公道的な資格になってはいるが、所有人格としてはあくまで私人の私道に留まっている。この曖昧性により、どちらの性質を重視するのかを廻って解釈が分かれており、最近は、万事に於いて難しくする時代の風潮を受け、所有者の権利を擁護する解説書が多い。実際に、若干のトラブルの余地がある。これを確認しておく。 

 位置指定道路の準公道的な性質を重視すれば、所有は私人であるが、認定を受ける際に「公(おおやけ)の利用に提供することを認める」旨を誓約している以上、位置指定道路の通行往来を妨げることはできない。万一、所有者が所有権を主張して通行の妨害行為を為す場合、権利の濫用とみなしてこれを排除するよう求めたり、将来の妨害行為の禁止を求めたりすることができる。

 土地所有者は、位置指定の廃止又は変更がされない限り、位置指定道路内に建物や擁壁を建築することができない等の法令上の制限を受ける(建築基準法44条、45条)。違反すると、特定行政庁は工事の施工停止や建築物の除去等の是正措置を命じることができ、罰則も定められている。

 位置指定道路の私人的所有制を重視すれば、「公(おおやけ)の利用に若干の制限」を主張することができる。所有者は道路に対する維持・管理の義務及び権利を有していることから、法令に反しない限り、道路の保全と関係権利者の居住の安寧のため、道路の利用を自治的に定めることができる。例えば、長時間の駐停車は許されないとするような。道路を利用する一般公衆はその定めによる利用制限に服することが要求される。  
 この問題につき、最高裁平成5年11月26日判決、最高裁平成9年12月18日判決、最高裁平成12年1月27日判決がある。最高裁平成9年12月18日判決は次の通り。
 建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて、日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が上記通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである。

 けだし、道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則であるが、生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通についての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった通行に関する利益は私法上も保護に値するというべきであり、他方、道路位置指定に伴い建築基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った道路敷地所有者は、少なくとも道路の通行について日常生活上不可欠の利益を有する者がいる場合においては、右の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、右の者の通行を禁止ないし制限することについて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私法上の通行受忍義務を負うこととなってもやむを得ないものと考えられるからである」。

 三 右事実関係に基づいて検討する。

 Xらは、道路位置指定を受けて現実に道路として開設されている本件土地を長年にわたり自動車で通行してきたもので、自動車の通行が可能な公道に通じる道路は外に存在しないというのであるから、本件土地を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているものということができる。また、本件土地の所有者であるYらは、Xらが本件土地を通行することを妨害し、かつ、将来もこれを妨害するおそれがあるものと解される。他方、右事実関係によっても、YらがXらの右通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情があるということはできず、他に右特段の事情に係る主張立証はない。したがって、Xらは、Yらに対して、本件土地についての通行妨害行為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができるものというべきである。

 最高裁平成12127日判決は次の通り。
 「建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである(最高裁平成8年(オ)第1361号同9年12月18日第一小法廷判決・民集51巻10号4241頁)。そして、このことは、同条2項の規定による指定を受け現実に開設されている道路の場合であっても、何ら異なるものではないと解するのが相当である。

 これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、本件私道は、専ら徒歩又は二輪車による通行に供されてきた未舗装の道路であり、Yらの承諾を受けた請負業者が建築工事のため1年間本件私道を自動車で通行したことがあるほかには、自動車が通行したことはなく、Xらは、○○が死亡した昭和61年10月以降、その共有地を利用していないのみならず、右共有地を居住用としてではなく、単に賃貸駐車場として利用する目的で本件ポールの撤去を求めているにすぎないというのであるから、Xらが本件私道を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえない」。

 大阪高裁平成261219日判決も、上記基準に基づき、通行を妨害した土地所有Yに対し、①工作物等の撤去、②車止めブロック、立体ブロック及びポール等その他通行の妨害となる工作物等を設置の禁止を命じました。

【道路の所有者側からの通行制限】
 車両の通行などは所有者から制限される可能性もある。その一つが「路上駐車」問題。純然たる私道の場合には、道路交通法上の道路(同法2条1項1号)には該当しない。そのため、私道の路上駐車は道路交通法違反にならないので、警察が駐車禁止を取り締まることができない。自宅前に知らない人に駐車されていても所有者自らで対処しなければならない。対応策としては、道路交通法ではなく、自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)による車庫法違反として警察に対応してもらうことが可能である。車庫法によると、昼間であれば12時間以上、夜間であれば8時間以上、路上駐車をすることは禁止されており(同法11条2項1号、2号)、これに違反すると20万円以下の罰金となる(同法17条2項2号)。もっとも、車庫法違反として取り締まってもらうには、12時間(昼間)または8時間(夜間)以上駐車していることを示す写真や防犯カメラ映像といった客観的な証拠の収集が必要となり、実効性は必ずしも高くない。

 道路は通行往来の為のものなので、道路上で遊戯するのは原則的には好ましくない。ファミリー世帯が多い地域で、遊ぶ子どもの数も多くなってくると、大きな声を「騒音」と感じる人も出てくる。親たちも加わってバーベキューを行うなど、「自分の庭」のように使って騒いでいることを快く思わない共有者もいる。横浜市の分譲地で、私道で遊ぶ子どもたちの声やバーベキューでの騒ぎを止めるように言っても聞き入れてもらえず、転居を余儀なくされたとして、住人が15年12月、他の共有者らに損害賠償を求める民事裁判を起こしている。判決では、子どもたちの発する声などが「騒音」に達していたと判断された。しかし、伝統的に我が国では道路などが子どもの遊びの場や近隣住民のコミュニケーションの場として機能してきたことから、騒音ではあっても受忍すべき範囲にあるとして、違法性を否定し、損害賠償を認めなかった。

 分譲マンションの通路は所有者の共有部分であり、“私道トラブル”は起こる。国土交通省のマンション総合調査結果(2013年度)によると、マンションにおけるトラブルの発生状況として、居住者間のマナーを巡るトラブルが圧倒的に多く、その具体的なトラブル内容を見ると、違法駐車やペット飼育、生活音といったトラブルの他に、「共用部分への私物の放置」というのが挙げられている。マンションのエントランスや廊下という通路に私物が置かれていて通行が妨げられているといったようなことである。玄関前に居住者のみが使用できる専用スペースなどを設けるマンションも増えているが、まだまだ少数にとどまっている。

【道路の所有者の道路の管理】
 位置指定道路の管理は所有者が行うことになる。所有者が複数いる場合は共同管理となる。これが為、道路の管理、保全費用は所有者が負担することになる。

【道路の所有者に対する道路の掘削承諾】
 位置指定道路はあくまで私道であるので、上下水道の配管などのために位置指定道路を掘削したい場合、所有者の許可を得る必要がある。所有者が快く許可してくれれば良いが、掘削の許可する代わりに金銭などを要求される事例もある。

【位置指定道路の指定を受ける条件】
 位置指定道路はどんな長さや幅、形状でもいいというわけではない。指定を受けるためにはいくつかの条件があり、満たしている必要がある。

 まず、原則としては両端が他の道路に接している通り抜け道路で、幅は4m以上が必要です。ただし、先が行き止まりの袋小路の場合、長さが35m以下ならば指定を受けることが可能です。もし、35mを超える場合は、自動車が転回できるスペースとして自動車転回広場を設けなくてはなりません。

 また、既存道路と接する場所には両側に隅切りを設ける必要があります。隅切りとは、角地の土地で既存道路と位置指定道路が交わる角の部分を三角形に切り取り、その分を道路にすることを指す言葉です。角いっぱいに塀などが設置されると、見通しが悪くなったり、自動車で道路を曲がりにくくなったりする可能性があります。そのため、隅切りは、角を切り取ることで見通しや通行のしやすさを確保することが目的です。

 ほかにも、位置指定道路の指定を受けるためには側溝を設けるなど、排水設備が設けられている必要もあります。また、道路形態や境界が明確であり、階段状などではなく、傾斜も一定以下でなければなりません。

 さらに、土や砂利などのようにぬかるむ可能性のある道路ではなく、基本的にアスファルト簡易舗装以上の舗装をする必要もあります。

【位置指定道路の基準】
 位置指定道路の基準は建築基準法施行令 第百四十四条の四で決められている。これ以外に地方公共団体の条例で基準が定められている場合がある。
 
 建築基準法施行令 第百四十四条の四
  
 法第四十二条第一項第五号 の規定により政令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
 
一  両端が他の道路に接続したものであること。ただし、次のイからホまでの一に該当する場合においては、袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。以下この条において同じ。)とすることができる。
 
イ 延長(既存の幅員六メートル未満の袋路状道路に接続する道にあつては、当該袋路状道路が他の道路に接続するまでの部分の延長を含む。ハにおいて同じ。)が三十五メートル以下の場合
ロ 終端が公園、広場その他これらに類するもので自動車の転回に支障がないものに接続している場合
ハ 延長が三十五メートルを超える場合で、終端及び区間三十五メートル以内ごとに国土交通大臣の定める基準に適合する自動車の転回広場が設けられている場合
ニ 幅員が六メートル以上の場合
ホ イからニまでに準ずる場合で、特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認めた場合
 
二  道が同一平面で交差し、若しくは接続し、又は屈曲する箇所(交差、接続又は屈曲により生ずる内角が百二十度以上の場合を除く。)は、角地の隅角をはさむ辺の長さ二メートルの二等辺三角形の部分を道に含むすみ切りを設けたものであること。ただし、特定行政庁が周囲の状況によりやむを得ないと認め、又はその必要がないと認めた場合においては、この限りでない。
 
三  砂利敷その他ぬかるみとならない構造であること。
 
四  縦断勾配が十二パーセント以下であり、かつ、階段状でないものであること。ただし、特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
 
五  道及びこれに接する敷地内の排水に必要な側溝、街渠その他の施設を設けたものであること。
 
2  地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認める場合においては、条例で、区域を限り、前項各号に掲げる基準と異なる基準を定めることができる。
3  地方公共団体は、前項の規定により第一項各号に掲げる基準を緩和する場合においては、あらかじめ、国土交通大臣の承認を得なければならない。

【位置指定道路の調べ方】
 位置指定道路がある場所の市役所の建築指導課に行くと位置指定道路について調べることができる。窓口で道路位置指定図を閲覧すると、位置指定道路かどうかわかる。指定年月日、位置指定番号、その道路図面(私道の長さや幅)が記載された図書があるので、これを確認し、場合によってはコピーすれば良い。但し有料になっている。案件によっては道路課、都市計画課などに行く必要もあるが、建築指導課を通してのことになる。

【位置指定道路に面した敷地を買う場合】
 位置指定道路に面した敷地を買う場合には、位置指定道路を誰が所有しているのか確認しておく必要がある。位置指定道路の共有所有権も含めて購入する場合は問題ないが、位置指定道路の所有権を持たない場合には、上記のようなトラブルが起きないように購入前に覚書をかわしておくのが良い。覚書には掘削・通行などを将来にわたって許可すること、代償として金銭を要求しないこと、位置指定道路の所有者が変わっても覚書の内容を承継することなどを明記しておれば良い。いずれにせよ、宅建業者は、土地の取引に関与するに際しては、常に、道路の幅、公道か私道か、利用制限はないかについて、細心の注意を払わなければならない。